ちなみに、道具は吉島さんが使い心地を確かめ、鉄の量まで細かく指定して
業者に特注したもの。包丁や締金などの道具は一人にひと揃いを持たせる。
それぞれの手になじんでいるから、「社長と言えど」ほかの人の道具は決して
使わない。
 伝統柄へのこだわりも、吉島さんのポリシーの一つだ。「それぞれの柄に
意味が込められています。伝統の柄があってこそ“鍋島”緞通」その一言に、
織り継がれた三百年を思った。織元の思いと、職人が結んだ一目一目の積み
重ねに、鍋島緞通の歴史がある。
 いろいろな人の、いろいろな思い。
 それらが結ばれ合って、鍋島緞通はできあがっていく。

取材・撮影 大野あすよ