手取り足取り手ほどきを受け、幾枚も練習を重ねた。
「初めて商品として出したのは『蟹牡丹』。まるでお嫁に出した気分でし
た」。そのお客様の名前は今も忘れない。畳1畳分の大きさを約1カ月を
かけて織る緞通は、力加減を一定に保つのが難しいそう。
「単純作業だけに、気持ちや体のコンディションが万全でないと。ゆがん
だからと言ってやり直しはできない。真剣勝負だから、何があっても工房
に来たら平常心(笑)」。
 年間に織るのは12〜13枚。伝統の柄はそう多くはないので同じ柄を何度も
織ることになる。でも、「その時の季節、季節で、やっぱり1枚1枚が
違うんです」と皆さん。
 彼女たちはとても自然体で、職人というより、普通の女の人という印象だ。
日々の暮らしから生まれる豊かな感情を、平常心というフィルターを通して
織り込むことがぬくもりを生んでいるかのよう。「仕事なので“織る”と
いうよりも、“織る”事が好きだから一生続けたいと実感しています。」
8年の経験を積んだ職人さんの言葉だった。


1枚1枚に織り手の日々の思いが込められている。